川 本  将 人

高台から眺めたOBANの町
WEST COAST TRAVELER 2008
「スコットランド西海岸の旅 2008」
Argyle to Rothian

潮風の香るウィスキーとシーフードの旅

vol.2

INVERARAY LOCHのほとり
                                     
「2007 Argyle to Rothian」
OBANではこれを食え!@
「フィッシュアンドチップス」


この看板が目印です。

こんな箱に入っています...

写真の魚は舌平目
ほかに鱈などももちろん選べます。

比較的夜遅くまで営業


OBAN蒸留所


町のど真ん中にある蒸留所
その全容がよくわからない...




ロゴといい、建物といい、なかなかカッコイイ

蒸留所の目の前には中華料理屋がある。
マネージャーの事務所には、いつも中華料理の香が漂っているとか…

ポット・スティル

全体的に「見せる」事も意識して作られた蒸留所内
小奇麗にまとまった印象


ここでは貯蔵中の樽から12年物をティスティングさせてくれる。

蒸留所内から外を眺める

クラッシック・モルト・シリーズをよろしく!?と言ってました。


OBANの空気


穏やかな海にはいつも水鳥達が集まる。

白鳥もカモメもみんな一緒にツイツイ...

海岸に面した町並みは小さい熱海のよう!?

オーバンを一言で言うならやはり
「港町」波止場の小さな町なのだ。




オフ・シーズンなので静かなフェリー・ポート
手前のグリーンの看板は魚屋。
シーズンはここでスモーク・サーモンや貝のマリネ、
サンドウィッチなどの海の幸が手軽に楽しめる。
これがもう絶品!!

夜景も素敵なオーバン


OBANではこれを食え!A
「はっきり言って、Seafood三昧」


生牡蠣に盛りだくさんのシーフード・プラッター
白ワイン、シャンペン、ビールにウィスキー
何とでも相性抜群!!


生牡蠣にはペッパーを忘れずに!


EDINBURGHの空気


朝のリース・ウォーク
下町っぽさがたまらなく好き


有名なロイヤルマイル・ウィスキー

今回お世話になったゲスト・ハウス

ロイヤルマイルのTASS
ここのフードは安くてなかなか。


この街は立体交差も多く上へ下へ。。。

夕暮れ時のリース・ウォーク
さて。飲みにいくか!


夕闇迫るローズ・ストリート(通称、酔いどれ通り)







喫煙はテラス席でどうぞ

夜のロイヤルマイル
日本に比べ商店の閉まる時間が早い


こんな小道がたまらなく素敵なのだ

なにやら薄気味悪いパブ・サイン
かつて処刑場があったところにあるパブ


キャノン・ゲートの超老舗
若僧には手ごわいパブ

我が愛すべきTHE BOW BARのパブ・サイン
エールの樽らしきものを満載した馬車の絵
酒飲みの心をくすぐります...


LONDONの空気


朝のヴィクトリア周辺

フォートナム&メイソン

ピカデリーのバーガー・キングの中から通りを見る

ピカデリー・サーカス

高いと評判の地下鉄…
一駅でも乗るなら乗り放題1日券が断然お得!
15th Feb. 2008
Go to OBAN

OBANの町を波止場から眺める
 ブキャナン・バス・ステーションからオーバンへの旅はスコットランド独特のロッホとなだらかな丘の続く綺麗な風景に退屈させられることはない。とは言え前日のバレンタイン騒ぎで寝不足気味でバスがグラスゴーの街を出る前にすっかり眠ってしまった。目がさめたときには目的地のすぐ近くまで来ていた。
朝食もそこそこにバスに飛び乗ってしまったのでゆっくりとランチにしようと考えたが先ずは新鮮な魚のフィッシュ&チップスを求めて街中を散策した。メインの通りを駅とは反対方向に歩いていくと青い看板のチップ・ショップがあった。「ここに違いない」以前来たときに美味しいフィッシュ&チップスを食べたのはその店のものに違いない。ソールのフィッシュ&チップスをテイク・アウェーにして堤防で鳥さん達に囲まれながら食べる。10年ぶりに食べるオーバンの味だった。ソールは新鮮でクリーミー。衣もカラッと揚がっていてほんとに美味い。英国のフィッシュ&チップスの評判の悪さは有名だがオーバンのそれは全く違うのだ。ここまで来たから食べられる土地の味なのである。これだけでも来てよかったと思わせる味だ。飛び切り高級でもなければ感動させられるような味でもないのだが「どこか懐かしく陽だまりのなかに佇んでいるようなあたたかさがあり、気が休まる味」これが英国料理の良さだと思う。このフィッシュ&チップスはそんな英国料理の素晴らしさを見事に体現している。
1997年に訪れたときと大きな変化のない街並み。少しずつ記憶をたどっていく。最も大きな通りが海岸沿いに走り、土産物屋やホテル、レストランが立ち並ぶ、まるで小さい熱海のような街の中心にオーバン蒸留所はある。他の蒸留所とは趣を異にした個性的な立地条件だ。通りに面した海岸には白鳥やカモメがのんびりと散歩をしている。
ディアジオのクラッシック・モルト・シリーズの一つのオーバンは蒸留所も綺麗でその立地条件の良さからツアーは頻繁に行なわれており夏場には夜のツアーもある。以前訪れたときは夜のツアーで案内してもらった。他の蒸留所にもよくある様に以前使われていたモルティングフロアーをヴィジターセンターに改装している。ツアーは多くの観光客が参加した。英国内のモルト好きのご夫婦と共にツアーを廻る。ここのツアーは他の蒸留所とは少し趣が違っていた。特徴的な4つのフレーヴァー、スモーキー、シー・ソルト、オレンジ・ピール、ハニーのそれぞれがどの製造過程に由来するものなのかを説明していくと言う趣向だ。最近のモルト・ブームのなか各蒸留所は特徴ある個性的な独自のツアーを企画する様になっている。
先ずモルティングの説明。オーバンで使用するモルトは専門の工場で作られたものが納品され蒸留所で行なわれるのはミリングからの工程になる。原料麦芽はアイラのようにきつくピートを焚いたものではないが程々に煙臭がする程度のものを使用している。食べてみるとはっきりわかる。マッシュ・タンは大きく地元の水が仕込み水として使用されており、この工程で土地の空気を取り入れ塩のニュアンスをもたらすらしい。醗酵に進み、蒸留は二回ポット・スティルで行なわれる。ニュー・ポットをノージングさせてもらうと甘く、エステリーな香りでこの蒸留過程で完成したウィスキーの中にあるオレンジ・ピール的なフルーティな香りが作られると言うことらしい。貯蔵庫に行くと12年物のホッグス・ヘッド樽からサンプルを汲んでティスティングさせてくれた。度数は高いのだがバランスのよい原酒はよく熟成され甘いキャラメルのようなハニーのような味わいがある。ここで最後の特徴的フレーヴァーであるハニーのような甘さを感じさせる要素が熟成によりもたらされると言う説明を受ける。ヴィジターセンターに戻ると完成品である14年物の試飲となる。そこにはブレアー元首相が訪問したときの写真が飾られていた。英国の輸出品として昔から大切にされてきたウィスキーの地位を感じさせる一枚の写真である。中でもディアジオは大半の蒸留所を所有する業界最大手でシングル・モルトのラインではここオーバンなどの蒸留所ボトル・シリーズのクラッシック・モルト・シリーズは主力商品である。今までのものに加えシェリーでフィニッシュをしたラインも揃えそのラインも拡張している。
蒸留所の規模自体は決して大きくなく世界的な需要を考えれば品薄気味なのもうなずける。街の真ん中にある蒸留所は煙突が突き出ているところを除けば、外から見る限りではそこが蒸留所なのかさえよくわからない。こじんまりとした敷地に上手くまとまっている。建物は古そうでありながらモダンで趣があり白と黒にまとめられた外観はなかなかしゃれている。街中の蒸留所ならではと思うのは向かいにチャイニーズ・レストランがあるあたりは不思議な光景である。
蒸留所を後にしオーバンの街を散策する。港があり海岸線の反対には高台があり住宅街が広がっている。分りやすくなじみ易い街並みで、はじめてでも迷うことはない。パブも多く、インド料理や中華料理店、シーフード・レストランやイタリアンもあり飲食店も充実している。小さい街だがここは西ハイランドの都と言われ小奇麗な街中には映画館までありおおよそ必要と思われる施設は何でも揃っているといっていいだろう。フェリー・ポートがありシーズンには多くの観光客が訪れ賑わう。今はオフシーズンで観光客の姿はまばらで定期便のフェリーもなく、グラスゴーから来る電車も一日一本程度で駅は静かである。この町は海に面しており魚介類に恵まれている。今年のスコットランド・フェアで大人気だった蟹味噌のサンドウィッチもはじめてこの街で食べた。フェリー・ポートにあったそれを食べさせてくれた屋台は今では店を構えていたが残念ながら改装中であった。魚屋をのぞいて見ると予想通り新鮮な魚や貝がたくさん売られていたタラ、サバ、ニシンなどを燻製にしたものやフィレ、スモーク・サーモンや海老、蟹
ムール貝、牡蠣など日本でもなじみのある新鮮な魚介類が並べられていた。セルフ・ケータリングの宿に泊まっていたら買って帰って料理してみたい美味そうなものばかりである。海の幸になじみのある日本人としてはスコットランドで一番舌を喜ばすことのできる街かも知れない。街外れのTESCOに行き買い物をしてみることにした。日本の郊外型大型スーパーと大きな違いはないが売られている野菜や魚、肉などの内容が異なっているのがおもしろい。ジャガイモのパッケージが大きく、しかも種類が多いのはさすがイモを主食とする国ならではだ。野菜類はスペインなどから入ってくるパプリカなどは大ぶりで色がよく豪快だ。魚介類はやはり地元の魚屋にはかなわない様子。肉類は鶏などは丸ごと売っていたり日本のそれと比べるとどれも大きい。ラム・チョップなどがパッケージで普通に売っているあたりは日本とは違うところだろう。惣菜売り場にはパイが並んでいた。調味料コーナーには寿司酢や醤油などを並べた寿司特集のコーナーがあり日本食も身近なものになってきたと思わせる。オーバンでなら〆鯖など作ったら結構いけるかもしれない。
少し小腹がすいたのでカップ麺でもと思い探してみたのだがなかなか見当たらない。仕方なく即席スープとパスタを買った。スペイン産のミカンが美味しそうだったので籠に入れ、久々にローズのライム・ジュースを購入し、ラズベリー・ヨーグルトなどを買い込んだ。BBへ帰りお湯を沸かし買ってきたものを試してみた。ミカンも剥いてみた。どれもいい味だった。旅行に来てから(当たり前なのだが)外食続きで少し疲れていたのでこのチープな味わいはどこかホッとさせるものがあった。家庭的な雰囲気に満足し昨晩の寝不足も手伝ってかパブ・クロウルに出かける間もなく早々に深い眠りに落ちてしまった。


16th Feb.
〜Short Tirp 遠足気分でインヴァレアリーへ

インヴァーレアリー監獄博物館
この地を訪れる機会があったら是非「収監」されることをお奨めする.。.
昨夜早々に寝てしまったことが悔しく、シーフード・レストランにも行ってないし、オーバンのパブに行かないで帰ることは出来ないと思い予定を変更してオーバンへの滞在を一日増やし日帰りでインヴァ―レアリーへ行くことにした。そこに行く目的はロッホ・ファイン・ウィスキーという酒屋に行くためである。ここは比較的値段も手ごろで掘り出し物があったりするからこの方面に来たら要チェックなのだ。
BBを出て近くのスコットランド教会の周りをプラプラしていたら老婦人に「そこの教会の裏でお茶とケーキをサービスしているから是非寄ってください」と声をかけられた。誘われるまま中に入ってみると教会の集会場にはお年寄りを中心にたくさんの人々が集まってお茶に時間を楽しんでいた。空いてる席を見つけてくれお茶やサンドウィッチをご馳走になった。部屋の壁にはクリスマスの絵が飾られていたり、ロシアに聖書を寄付したレポートなどが張られていてそれらが教会の施設だと告げていた。キリスト教系の学校で育ったぼくにとってはどこか懐かしい雰囲気に包まれていた。いろんな人が歓迎の意味をこめて話し掛けてくる「親戚の娘が日本にいるのよ」「日本のどちらから?」「オーバンにはどれくらいいるの?」「スコットランドはあちこち旅した?」「お茶も手作りのケーキもたくさんあるから楽しんでいって!」などなど皆親しく、ホッとする心温まるお茶の時間を楽しませていただいた。この手作りのスコーンや焼き菓子、鮭のサンドウィッチなどはとても美味しく、リアルな英国の味を堪能した。パブで話が盛り上がるのとはまた一味違った人々との交流は楽しいひとときだった。それにしても集まっているご老人の方々がみんな元気で特にご夫人方は綺麗な色の服を着ていておしゃれである。前々から思っていたのだがこの国のお年よりは日本に比べみんな元気で楽しそうに生活している。もう歳だからといった感じが無く、生き生きと人生を楽しんでいるように見える。教会の紹介をしていただき御礼を述べて教会を後にした。明日は日曜日なので時間があれば久しぶりに礼拝に参加してみようかという気にさせられた。最近来る人が減った教会の対策と言うわけではないのだろうが、このように迎えてもらうとたまには教会にも立ち寄ってみようかと思わせる効果もあるのではないか。パブやレストランに鞍替えしてしまうのも悪くないが地道に地域に密着している生きている教会も旅行者にとっても嬉しい存在である。
教会でのティータイム
スコーンや手作りのクッキー、サンドウィッチに紅茶
皆さんから温かいおもてなしをしていただきました。
バスに乗りグラスゴー方面に向かう。スコットランドらしい風景の中を進んでいく。見慣れた風景だが何度見ても心が洗われるような思いがする。だから何度もこの国に来てしまうのかもしれない。今日も幸運なことに天気には恵まれている。まったく雨の降る気配もなく気分のいいショート・トリップになりそうだ。
インヴァーレアリーはロッホのほとりにできた小さな町でその歴史は古い。ロッホはゲーリックで湖を意味するが、じつはロッホ・ファインは非常に深い入り江で淡水の湖ではない。ここは牡蠣の養殖で有名でスコットランドでは「ロッホ・ファイン・オイスター」と言えばちょっとしたブランドである。車以外では行き難い場所で鉄道では行くことができない。バスは一日数本が運行されていてキャンベルタウンやオーバンに向かうバスはここを必ず通ることになる。通りが一本の小さな観光地はシーズンオフで静かだ。この時期を狙ってか町の中は大掛かりな道路工事が行われていた。バスを降りて町の中を歩く。10年前とはあまり変わらない風景の町並みだが目的のロッホ・ファインウィスキーは店舗を随分前に目抜き通りに引っ越していた。とりあえずショップでリストをもらい営業時間を確認し、軽いランチに小さなレストランへ入り、ハギス・サンドを頂いた。シンプルで温かい田舎料理であった。
Toasted Haggis Sandwitchi 〜ハギス・サンド
お待たせしました!
シンプル!
ペロ。っとめくってみる。
中身は確かにハギス
パクパク。。。
なかなか旨い!
店をあとにしてこの町の名物博物館「インヴァーレアリー・ジェイル」で見学をすることにした。ここはかつて本物の監獄として使われていた建物をそのまま博物館にしている。展示は刑務所の歴史、各時代の受刑者の暮らしの変遷、収監された歴代の犯罪者達の資料などが細かく展示されている。各房の中には蝋人形が置かれリアルにその生活が再現されている。博物館内に作られた法廷の中には傍聴人まで蝋人形でリアルに作られ当時の裁判の様子を膨張することができる。館内を歩いていると当時のたくさんの鍵を持ち警棒を持った監守が突然現れ声をかけてくる。監守役は色々な質問に丁寧に答えてくれるという趣向である。さすがはヨーロッパ内の「ミュージアム・オブ・ザ・イヤー」に選ばれただけはある非常に充実した楽しい博物館だ。刑期を終え外に出ると夕方に近くなっていた。
入り口で早速、蝋人形のお出迎え
模擬裁判
これがなかなかリアルにできている。
うなだれた被告人、証人や被告人の家族までよくできている。
刑務所ではかつて牛乳を取るために牛が飼われていた。
ちなみに最も古い時代の刑務所の食事は、一日一回1Pintのポリッジだったそうだ。その後、それにパンやスープがつくようになっていった。
Loch Fyne Whiskies
充実した在庫を持つ英国でも5本の指に入るウィスキー・ショップ
所狭しとウィスキーが並んでいる。
天井には世界のウィスキーが並べられ、赴任中の響さんと山崎氏も肩を並べていた。
ロッホのほとりを犬をからかったりしながら散歩し再びウィスキー・ショップへ。今日は土曜日いつもより来店の顧客が多いらしく主人は上機嫌であった。いくつか気になるウィスキーを手に取り確かめる。それにしても最近のモルトは割高感がある。ポート・エレンの比較的値段が手ごろな物を見つけまとまった本数をお願いするも残念ながら在庫は一本のみ。この手のものはやはりはけるのが早いらしい。「日本からか?」と訊かれ「そうだ。」と答えると、とある日本人に送る荷物だといって箱に入っているウィスキーを見せてくれた。古いラガヴリンはじめ多くのオールド・ボトルが入っていた。日本には結構こんな高価なボトルが売れるそうである。主人の中では日本人はなかなか高い酒を買う上客らしいが今日の日本人は渋かったといった感じだ。近所で牡蠣を食べさせるいい店はないか?と訊いてみたら車がないといけないと言う事だったのであきらめて店を出た。
定番料理「Scampi & Chips」
手長えびのフライとチップス
海の近くでは是非食べたい一品。
素朴でほっとする味。海老の旨みが衣に包まれて、ふわぁ〜。
そこらのエビフライなんて目じゃないです。
ビネガーと塩胡椒で楽しむのが英国流。
ウィスキー・ショップの前のホテルに入りエールを一杯楽しんだ。小さいが多くの人々がフットボールの試合を見ながら盛り上がっていた。そろそろ夕食の時間なので外に出た。レストランは…何処も早くに閉店してしまい食事ができそうな店はなかった。しかたなく先程のホテルに戻り今度はレストラン・スペースにて食事を注文した。週末ということもあって多くの人で賑わっていた。スカンピイとマッセルズを注文し楽しんだ。やはりこの辺のシーフードは美味しい。バスの時間に間に合うように夕食を終え、バス停に向かった。週末で浮かれる若者が集まっていたり小さな町も週末の喧騒が漂っていた。バスに乗ると着たときと同じドライバーだった。いったい彼はこの路線を何回行ったりきたりしているのだろうか。
OBAN INN
波止場の酒場と言った風情満点
無事にオーバンにたどり着きパブを目指す。まずはオーバン・インに向かった。ここは港の入り口にあり、いかにも波止場の酒場といった風情溢れるオーバンらしいパブである。店内には船具が置いてあったり、世界の通貨色々なところに張られていたりする。日本円も張られていた。週末で店内は熱気で溢れ込み合っていた。エールを一杯ゆっくりとやって次のパブへ向かう。BBの近くのパブではライブをやっていた立錐の余地もないほど混雑した店内でいつものIPAを注文した。カウンターの中のバーパーソンの動きが面白い。矢継ぎ早に入るオーダーをこなしていく。チーフは背の高い20代の女性のようだ。見ていると今夜一番売れているのはウォッカの〜割りのようでマグナムのスミノフがものの数十分で空いていく。エールのノリでもないと思い、スパイスド・ラムのコーラ割をオーダーしライブを楽しんだ。店は人が減る気配もなく賑わっていた。


17th Feb.
〜To the East エディンバラへ向かう〜

「流行」

オーバンでも見かけたが最近スコットランドで流行っているらしいブランド
"SUPERDRY"
「極度乾燥しなさい」
「会員証な」などなど…
微妙な日本語が書かれたTシャツ等が目を引く。

微妙な日本語の書かれた
不思議なTシャツ
今日は1310に出発し一路グラスゴー経由エディンバラへ向かう長旅だ。
西海岸と島の旅も今日で最後。たくさんの美味しい海の幸とも今日でお別れかと思うと名残惜しい…という事で波止場のシーフードレストランにて西海岸名産の海の幸を堪能した。その店は右はイタリアン、左はシーフード・レストランだった。生牡蠣とシーフードプラッターを注文した。昼間ではあったがグラスの白ワインを注文した。牡蠣はもちろん申し分ない味。シーフードプラッターには生牡蠣もマッセルズも盛り合わせてあり、アイラのそれとはまた一味違った一皿だった。スコットランドで美味しい物を見つけるならやっぱりオーバンとの確信を深めた。
定刻通りに来たバスにはまた昨夜と同じドライバーが乗っていた。なだらかな丘を眺め、水をたたえたロッホの傍らを過ぎ、インヴァーレアリーを通り、また同じような風景を繰り返しバスはグラスゴーのセンターに近づいていった。ブキャナン・コーチステーションでエディンバラ行きに乗り換えた。1時間弱でバスはヘイ・マーケットを過ぎバスステーションに着いた。今回もピルリグ・ストリートに投宿し一年ぶりに夕暮れのエディンバラを散歩した。アイラからグラスゴー、西ハイランドを廻りエディンバラまで来ると地元に戻ってきたような安心感に包まれた。今夜は久しぶりにブリティシュではなく夕食はメキシカンにしよう。キャノン・ゲートのいつもの店でメキシカンを楽しんでロイヤル・マイル沿いのパブで一杯ハイランド・パークを楽しんで寝床に帰った。
  お気に入りを一杯…


18th Feb.
〜Stay in Edinburgh〜

朝のさわやかな日差しに包まれたノース・ブリッジにて
この街の月曜日の空気は少しばかり慌しい。出勤に急ぐ人がリースウォークを歩いていく。車も皆忙しそうだ。ぼくもこの町では少しばかり仕事モードになる。行かなければならない酒屋が数軒ある。先ずはロイヤルマイルウィスキーへ向かう。特に買うべきものもなく街をぶらつく。パブで一休みをしたりしながら街を歩く。上へ下へエディンバラのおもしろいところは街が立体的な構造になっていていたるところに小道や階段があり知っていればショートカットできるが知らなければ大回りさせられる。最近でこそどこに行くにも何通りかの道順が思いつくが初めの頃はわかり難い街という印象だった。
ケイデンヘッドは鍵が閉まっていた。困った。と思っているとコーヒーを片手に店主が戻ってきた。いつものようにティスティングしたりリストを見ながら酒選びを済ませた。ウィスキーだけでなくラムについても話し有意義な訪問であった。
CADENHEAD SHOP
店内に置かれた樽から直接ウィスキーやラムを注いでくれる。
一度宿に戻りパッキングを済ませ再びノースブリッジ方面に向かった。エディンバラ最後の夜はやはりここから始めないわけには行かない。夕暮れのローズ・ストリートをゆっくり散歩する。ここは別名「酔いどれ通り」パブが立ち並ぶ酒飲みにとってはたまらない通りなのだ。石畳のいかにもヨーロッパらしい風情の通りの両側にパブが並ぶ。みんなそれぞれ個性的でどこも入ってみたくなる。最近ではパブも禁煙なので店の外にいすとテーブルを出して喫煙できるスペースを設けている店もある。先ずはカレドニアン80でゆっくりと暮れゆくエディンバラの夕焼け空を楽しんだ。旅の疲れと共になんともいえない安堵感と幸福感に包まれた。夕食はやはりトラディショナルでいくことにした。ローズ・ストリートをあとにしグラスマーケットへ向かう。ここのはずれにあるビーハイブ・インのレストランは旨いスコッティッシュ料理を食べさせることで有名で何度かお世話になっている。今回はパブで気軽にディナーを楽しむことにした。いつものIPAを片手にステーキ・パイを頂いた。凄いボリュームである。ここのマッシュポテトは実にクリーミーで味わい深い。お腹も一杯になりいつものコースをたどる。


Edinburghでパブ飯と言えば「ビーハイブ・イン」がお奨めです!
←ステーキ・パイ
ここのクリーミーなマッシュ・ポテトは絶品!
グレイヴィーをたっぷり使ったパイはパブ飯のクラッシック。練りパイ生地のボリュームにも圧倒される。
サーロイン・ステーキ→
オニオン・リングを添えたステーキ。
塩胡椒のシンプルな味わ。肉の旨みが生きている。

ローズストリートのパブにて
ハンドポンプが並ぶカウンター
さすがはエディンバラのパブ。
カレドニアン・ブリュワリーのエールが並ぶ。
The Bow BAR
エールとウィスキーが好きならば絶対にここに行くべき。
いわゆる英国のぬるいビールが楽しめて、モルトもセンスの良いセレクション。
雰囲気はオーセンティックでローカル。古きよき時代の殿方用のBAR
グラスマーケットからロイヤルマイル方面に登る坂の途中にこの店はある。BOW BARはエディンバラを代表する今では少なくなった正統派スコティッシュ・バーである。店は比較的狭くカウンター立って酒を飲みながら会話を楽しむ古きよき時代のパブの雰囲気なのだろう。早速IPAを注文しバックバーのウィスキーを見ていると隣の若者がウィスキー・リストを渡してくれた。今回の旅はアイラを中心に廻ってきたので最も好きなカリラを注文した。隣のリストを渡してくれた若者二人は親友同士で共にエディンバラ大学に学びそれぞれ日本語、韓国語を勉強したそうである。インヴァネス出身のクリスは日本語をメジャーにし日本にも旅行したことがあり、日本でもソサエティのイベントに参加したり、東京のモルトバーにも足を運んだそうである。一度サントリーで働いてみたいと言っていた。二人は韓国でのウィスキー市場に注目しているらしく、日本の次は韓国での市場の成長に注目しているといっていた。問題は酒税であるとぼくは主張。韓国は輸入酒に対する関税が高いのでこのあたりが市場の成長を妨げる要因になるのだ。彼らもこの点には同意した。政府からの働きかけで酒税を下げさせるのか、高いまま富裕層のみをターゲットとするかは結論に至らず。全員一致の見解としては「韓国人は焼酎を飲む文化で蒸留酒に対する馴染みはいいと思われる。しかしながら一気にあおるような飲み方なのでゆっくりとその香味を味わう飲み方で持ち味を発揮するスコッチ・ウィスキーを普及させるには、先ず飲み方を含めた啓蒙的な宣伝が必要である。」と言うことだった。ウィスキーを自分でも楽しみそれをビジネスにしようという若者がいるなんて最近のウィスキー業界はやはり活気づいている。つい12,3年前までウィスキーは前時代的飲み物で若者は見向きもしなかったのに最近では少し状況が変わったようである。このあたりでも24時間運転しているアードベッグもなるほどと思う。インヴァネスの話、グラスゴーの話、エディンバラの話など土地にまつわる話やモルト談義に火がつき気が付くと二杯目のグレンファークラス105を片手に話に夢中になっていた。新しい世代の若者のウィスキー・ドリンカーと一緒飲めるのはほんとに楽しい時間であった。この酒を注文したのは偶然ではない。個人的に特別な思いのある銘柄なのだ。1997年の2月にエルギンのG&M前のインペリアル・バーに入り、この酒を注文した。レギュラーの一人ジェミソンがカウンターの端に腰掛けた白髪のアインシュタインのような爺さんを見ろといった。彼は何かブレンドのウィスキーに水を加えながらチビチビ飲んでいた。その飲み方は長年ウィスキーを飲んできたことがはっきりとわかる風格と威厳を備えていた。彼はグレンファークラスで長年スティル・マンを勤めた男とジェミソンが教えてくれた。そのとき「エルギンのアインシュタイン」と会話を交わしたわけではないがグレンファークラスと言えばいつもインペリアル・バーのカウンターで飲んでいた彼を思い出す。そしてぼくのウィスキーにかかわる仕事のオリジナルはエルギンのあの店にあったように思うのだ。
程よく酔いもまわり名残惜しく二人と握手を交わし今後のウィスキー業界の発展に乾杯し店を出た。パブとはこんな話ができたりするのも面白い。いつか彼らが日本や韓国でウィスキー・ビジネスで成功させたら素敵である。パブでビジネスのアイデアやチャンスを生み出すこともある。かつて英国で一世を風靡したコーヒー・ハウスで保険が生まれたように様々な人々が集まり情報の交換をする場としてのパブはとても重要なのである。
泣きの一杯はピルリグ・チャーチのはす向かいのロール・パブでいつものIPAにした。閉店まじかで店は閉店作業に忙しそうであった。このパブは地元民が集まるローカルで自分にとっては近所のBARと言った感覚の店だ。最後の一口を飲み干し外に出ると隣のテイク・アウェーのチャイニーズが気になった。カレー風味の焼そばを持ち帰り部屋で食べた。この焼そばはやめておいたほうがよかったのだが…


19th Feb.
〜Fry to LHR〜

今回投宿したヴィクトリア周辺
この界隈には安宿が並ぶとはいえ綺麗な街並みだ。
エディンバラはどんよりとした天気で今にも振降り出しそうだ。宿からウェーバリー・ブリッジまでタクシーをお願いする。リースウォークの朝はいつも混み合っているが工事中の箇所も多く思った以上に時間がかかりその間運転手さんのおしゃべりは絶好調。彼はいかにもスコティッシュといった感じのおじさん。すでに定年しているそうなのだが仕事が好きで適当な時間にボチボチやっているのだそうだ。彼は話し好きだけでなく旅行も好きなようでヨーロッパから始まってアジアはシンガポールなどあちこち行っているようだ。マデイラにも行ったことがあるといっていた。やはり気候のよいマデイラは年配の旅行者には人気なのだ。その中でももっともお気に入りでまた行きたい所はオークニーと言っていた。色々旅行した中でもオークニーは様々な島があり一週間くらいでは足りないくらい魅力的な場所だそうである。あちこちに旅行した上で国内で好きな場所があるなんて素敵である。その後話しはウィスキーの話しになり、戦地で大英帝国陸軍が活躍できたのはジョニ―ウォーカーのおかげという話しが終わる頃に目的地に着いた。
今日は霧が深い。ダブルデッカーの二階最前列から見る見慣れた風景も霧にかすんで幻想的に見える。なぜだか今回の旅行は天気に恵まれている。滞在中に雨に降られない。晴れを呼ぶ座敷わらしがついているようだ。またもやアクシデントに襲われる。予定の便は欠航。次の便に飛び乗る。どうも今日は胃の調子が悪い。昨夜の深夜の焼きそばのせいだろうか。
なんとか無事にロンドンにたどり着く。今ひとつ調子が出ず酒を飲む気になれずに食事だけすることにした。ロンドンに行くならということでお勧めのチャイニーズレストランに向かう。水で食事もどうかと思いジンファンデルのロゼを一杯お願いする。優しい口当たりのロゼは疲れた体に束の間の活力を与えてくれた。スープから最後の堅焼きそばまで楽しく頂いた。この焼そばの魚介類の火入れ具合は絶品だった。外に出ると寒さが身にしみた。今日は早く寝るのが得策のようである。スーパーに立ち寄りホテルに帰りあたたかさに包まれて深く眠った。


20th Feb.
〜LHR to NRT〜


フライトを前に…
ヒースロー空港は現在工事中
より便利になるそうです。
昨夜のあたたかい眠りのおかげで目覚めは思った以上にすっきりしていた。期待出来ない朝食をとりに地階に向かう。コーヒー、オレンジジュースにミューズリーの簡単な朝食を済ませる。部屋に戻ってシャワーを浴びて出かけなければならないのだが、チェックアウトの時間が迫っているにもかかわらず、しばし部屋で名残惜しくしていた。最後のロンドンの朝はどうしても名残惜しい。ホテルを出て急いでピカデリーのフォートナム&メイスンに向かいチーズを調達し、地下鉄に乗りヒースローに向かった。
フォートナム&メイスンのチーズ売り場
好みのものを好きなだけカットしてくれる
たくさんの新鮮そうで大ぶりな野菜が並ぶ。
許されるならば持って帰りたくなるものばかり。

成田行きの便は乗り継ぎの客を待つ為に予定よりずいぶん遅れて離陸した。今は食事が終わり機内は照明が落とされた状態になっている。
今回の旅では欲張りに、急ぎ足であちこちに行った。(同行していただいたお二人には、慌しいスケジュールの中での旅行になってしまいいささか申し訳ないような気もするが…)
 去年の旅行では都会を中心を中心に滞在しパブやレストランを巡った。今回は田舎の蒸留所めぐりから、都会のレストランやパブまでと豊かなヴァリエーションで旅行をした。ここ数年全く忘れていたことだったのだが、24時間いつでも何でもできる普段の生活が当たり前でない場所でウィスキーは作られていることを思い出した。
酒には造る人から飲む人まで色々な立場の人が関わっている。その中でぼくはエンド・ユーザーに最も近く飲み手に様々な酒を紹介する立場にある。時に冷静で、時に情熱的に作り手の思いを伝え、様々なお酒をお客様に提供するのがぼくの仕事なのである。そして今回の旅のように、時に作り手に飲み手の思いを伝えることもまた大切な仕事である。そういう意味では埼玉の秩父蒸留所とはスコットランドの蒸留所との関係とは違いより密接で特別な関係が築けると思う。
造る人、売る人、飲む人…三者三様の立場でウィスキーを、酒場を語るなかなか恵まれない機会に恵まれ、ほんとに素晴らしい旅行であった。それぞれが最高のパフォーマンスを発揮したとき、その酒の置かれた空間は至極となる。素敵な空気に包まれたパブには味のある由緒正しき「置物」が置かれ、そこに足しげく通う人々が気がつけば「座敷わらし」のように知らず知らずのうちに夜毎カウンターについている。少しづつ我が愛すべきパブも素敵な空間になってきたように思う。最近のCASK AND STILLには素敵な「置物」が置かれ、なかなかついてくれない「座敷わらし」がついてくれているようでほんとに心強い。それを実感し、心から感謝した2008年の旅だった。10年の節目を過ぎての旅行にはふさわしい旅となった。

See you soon

今回の旅行にご協力いただいた方々へ…
今回のあわただしい旅にお付き合いしていただいたお二人、ありがとうございました。また機会があれば懲りずにお付き合いください。
また、毎度毎度のことながら長期の留守にご理解いただいておりますお客様には心より感謝申し上げます。
そして、留守をしっかりと守ってくれたスタッフには、心から感謝しています。

Special Thanks

...all of heartwarming Scottish people !

前編ISLAYはこちら

Written by M.Kawamoto
updated:12 March, 2008 by CASK AND STIL
L

BAR CASK AND STILL TOP