川 本  将 人

ダフタウンに向けて順調にドライブ中
2006 Whisky Pilglims
「ウィスキー巡礼」
〜ウィスキーの聖地を訪ねて〜

vol.1

ダフタウン〜クレイゲラヒーに続く道
                                     
「2006 Trip to Scotland」

スペイサイドを巡る


ダフタウンの中心に立つ時計台。
よく見るとスティルとウィスキーグラスの
イルミネーションが…
さすがはウィスキー・キャピタルです。




モートラック蒸留所の貯蔵庫



煙が上がり稼動中のモートラック。動いているのを見たのは初めてであった。



グレンフィッディック蒸留所の入口


マッシュタン

ウォッシュバック

貯蔵庫



夕暮れ時のマッカラン蒸留所


ダフタウンのウィスキー博物館に展示された昔の道具。冬季は休館で中には入れず。もし訪れるならばハイシーズンに。

ロングモーン蒸留所
ロングモーン蒸留所の見学のアレンジにあたり、ペルノ・リカール・ジャパン様に大変お世話になりました。有難うございました。


ここはかつて日本のウィスキーの父「竹鶴政孝」が初めて修行した蒸留所であると言うことはあまり知られていない。シーバスのキー・モルトを生産するペルノ・グループの虎の子。シングル・モルトとしてはあまり知られていないが、知る人ぞ知る複雑な味わいを持つ秀逸なモルトを作る。


ロセスで見つけた珍しい光景
スティルを作る会社らしいのですが…
これは納品前の新品のスティルでしょうか?
スティルにグレンモーランジの文字。



グレンファークラス蒸留所




入口にあるポット・スティルのオブジェ


パゴダ屋根を乗せたヴィジター・センター


ダイニングに据え付けられたバー・カウンター。
ここでのティスティングは格別であった。
13th Feb.
NRT〜ABZ


成田からのBA6便は定刻通りにヒースロー到着。しかしここは過密スケジュールの空港らしく、乗り継いだアバディーン行きはゲートクローズは定刻ながら、待機時間が長く20分遅れで離陸。アバディーン到着1820。2年ぶりのスコットランドは思ったよりも暖かい。同じ便にキルトを着込んだ5人くらいの若者グループ。アー、スコットランドだなー。
今回はレンタカーを借り、車でスペイサイドを巡る予定。この地をはじめて訪れてから10年。今回はバーテンダーの後輩を伴っての旅。運転手付の旅!?少しはえらくなった気分!?地図を片手に助手席でナビ。見事一発でホテルにたどり着く。さいさきは良さそうだ。我々バーマンにとっては聖地巡礼がごとくのスコットランド旅行。チェックインを済ませ早速近くのパブへ。
見る物がすべて懐かしい。帰ってきたという気分。わが相棒ははじめての本場のパブに興奮気味。自分がはじめてこの地を訪れ時のことを思い出した。これからの旅の中で多くの体験を日本での仕事に生かして欲しいと思う。それにしても私も何度この地に降り立っても楽しい気分になる。やはりWHISKY LOVERの聖地なのか。
今回の旅のタイトルは「ウィスキー巡礼」にしよう。ホテルのパブでバーテンダー談義に花を咲かせ閉店まで粘り、休みにつく。
若者との旅はいつもとは違った刺激が与えられそうで明日からが益々楽しみだ。



グレンフィッディックにて…
1974の樽。匂いだけ嗅がせてくれた。
もちろん、素晴らしい香りだった。
14th Feb. 
第一巡礼地 〜いざスペイサイドへ〜


アバディーンからA96を北上、およそ1時間程でダフタウンに到着。モートラック蒸留所から盛んに煙が上がっていた。10年前にこの地にたどり着いたときはモートラックはひっそりと静まり返っていた。ウィスキーはやはりブームなのか。盛んに動いている蒸留所を見るとなんだか少し嬉しくなる。ウィスキーキャピタル「ダフタウン」を代表するグレンフィディックへ。詳しく、楽しいツアーであった。パワーアップしたヴィジターセンターとツアーは観光客からプロフェッショナルまで楽しむことが出来る。さすが!そのフレーヴァ―同様、ヴィジターの迎え方も立地条件も誰にでも楽しめる。
再び車に乗り、さらに奥地のグレンリヴェットへ。行く道沿いにも、タムナヴリン、オルタナベーンなどの蒸留所があり、まさにスペイサイド!それにしても道も狭く、くねくねと曲がっているしアップダウンもある。なるほど密造には適した場所だったのは十分に理解できる。セントアンドリュース・クロスとトリコロールの国旗がはためく蒸留所に到着。しかし2月はツアーは休み。ぶらぶらと蒸留所内を散策。その大きさには目を見張る。流石は世界リヴェットだ。
タムナヴリン蒸留所    ザ・グレンリヴェット

トミントールの町にあるウィスキー・キャッスル。
ここのオリジナル・ラベルを知る人は今では少ないかも。
一路トミントールへ。この街のウィスキーキャッスルは一度だけ訪れたことがある。何と言っても名前が良い。町は以前のときと変わりは無い。しかし暖かい…通常であればとても寒くて手袋、マフラー必須の世界なのに。ジャケット一枚で歩けてしまう。ウィスキーキャッスルのスタッフに聞けば異常な陽気とのこと。今年は東京が寒かった分余計に暖かく感じる。
ウィスキーキャッスルの調子の良い親父との話に花が咲き予定を少し押してしまう。かつてのウィスキーキャッスルのオリジナルラベルの話、今後リリース予定のニューラベルの話しなどなど…、…、ま、僕も調子がいいからイイ勝負だったのかもしれない。そなんなこんなで車を飛ばし一路、クレイゲラヒー方面マッカラン蒸留所へ。

マッカランでのティスティング
最近は何処の蒸留所でも一般のヴィジター向けとは別にウィスキー愛好家や専門家向けのツアーを実施している。マッカランではスペシャル・ツアーを予約。詳しい説明とニューポットのティスティングを含めた2時間近いツアーを楽しんだ。製法やティスティングの話しだけでなく近年のウィスキーマーケットについて語ったり、商品戦略の説明など内容の濃い有意義な時間を過ごした。


インペリアル・バーがあった角の店舗。
この前が、あの有名なGMです。

看板だけは今も何故か健在
久しぶりにエルギンに行くことに。先ずは一路GMへ。立派になったGMやはりウィスキーに対する積極的な投資がうかがえる。しかしGMの前にあったローカルパブ「インペリアル・バー」は看板のみが残り、違う店になっていた。時間の流れを感じるとともにかなり寂しい思いをした。私にとっては特別に思いが深く、ローカル・パブというのを教えてくれた店だった。ここのレギュラー、ジェミソン氏にもらったパイプのCDは今も店で早い時間に活躍している。このパブとの出会いが無かったら、何度もスコットランドを訪れることも無かったかもしれない。
日も暮れてきたのでBB探しに。車で行動しているゆえ、駐車場付のところを探すのに難航。結局Torrr House Hotelに。一階がパブ、二階以降が客室と言う典型的な旅籠。スープとチキンの料理のパブご飯で落ち着いたところで町へ。夜も遅くパブ以外はほとんど開いていない。新しい店のクラブ系のバーへ。クラブ?音楽が少し大きめなだけでおしゃれなバーと言った風情。このゆるさがたまらない。やわらかいソファでテナンツ・ラガー(新しいフォントは異様にスタイリッシュ!)をすすっていたら眠くなったので、ホテルへ。明日へ備えて今日は早寝だ。



ELGINの風景
エルギンの町中の教会 今回の旅でお世話になったホテル エルギンの目抜き通り「ハイ・ストリート」 教会を改装したパブ



この車と共にスペイサイドを巡った。
短い時間ではあったが愛着がわいた。
15th Feb.
〜ロングモ―ンを訪問、そしてスペイサイドを満喫。順調と思われた旅…


久しぶりにエルギンの町を散策。2月のスコットランド恒例ヴァレンタインカードを買い忘れていることに気がつき書店で売れ残りをゲット。地元の高校生の手つくりの素敵な物。
今回のスペイサイド旅行において最も重要な訪問先ロングモ―ン蒸留所へ。ヴィジターセンター完備の蒸留所ならばアポイントが無くても丁寧に案内してくれるが、ヴィジターセンターの無い純粋なワーキングディスティラリーの場合は難しい。事前にアポイントを取らないといけないのは勿論なのだが、蒸留所に電話などかけても見学をアレンジしてもらう難しい。今回の場合はロングモ―ンを所有するぺルノ・リカールさんに直接お願いしたところ、快く了承していただいた。

      
ロングモーンの姉妹蒸留所「ベンリアック」
シングル・モルトとしてあまり知られていなかったが最近売り出し中。
なかなかいいモルトを造っている。
こちらはロセスのケイパートニック蒸留所
ここもシーバス系列。

約束の時間より少し早めに蒸留所に到着。お隣のベンリアックの様子を写真に取ったり、ロングモ―ンの周りをうろうろしていると今日案内をしていただくDarrenさんが現れた。それでは早速蒸留所内へ。肩から怪しい機械を下げた氏。何かと尋ねれば、二酸化炭素の探知機とのこと。やはりワーキングディスティラリーは安全への配慮も違います。最も驚いたのはウォッシュの香り。他の蒸留所とは異なるフルーティーな香り、まるでベルギーのホワイト・ビールのようだ。説明によると使用する酵母に秘密があるらしい。これがあの特有のフルーティーさの秘密なのかもしれない。一通り比較的こじんまりとした蒸留所を案内していただき、最後はスピリッツセーフの前で記念撮影。その後事務所内で15年物に使う原酒のバーボンカスクからのサンプルをティスティング。ロングモ―ン特有な柔らかな果実香とヴァニラのような香りが絡み合う複雑、且つバランスの良い仕上がり。なぜこのモルトは有名になれない(ならない)のか?やはりあの著名なシーバスを支える原酒ゆえブレンダ―が手放したくないと言うのが正直なところのようである。

 
案内していただいたDarren Hosieさん、我が相棒とスピリッツ・セーフの前で記念撮影。

暖かい歓迎に心を打たれぺルノ・グループの酒を日本で広める決意を固め、
次の訪問先「スペイサイド・クパーレージ」へ。
←これは樽職人が使う道具の数々
ここはスコットランドで一番大規模な樽工場。樽のリペアや製作だけに留まらず、ヴィジターセンターを作り観光資源としての可能性を切り開いた先駆者。以前は2月は閉鎖していたが近年は通年オープンらしい。やはり訪問者が増えてきたからなのか。樽に関する歴史的な展示から工場の上方から作業が一望できるスペースへ。しばし樽職人の見事な作業に見入ってしまった。樽の移動も見事としか言いようが無い。素人がやったら動かすことだけでも難しいだろう。ショップを少し見て再び車に乗り込み、クレイゲラーを抜け、アベラワー方面グレンファークラスへ。
地図で見るほど近くなく、結構走ったような気がした。何も無い野っ原にポツンとその蒸留所はあった。パゴダ屋根を乗せたヴィジターセンターに入るとラストツアーまでは30分ほどの時間があるとのこと。しばし周りをウロウロして写真をとったりして時間をつぶす。それにしても一面の草原。周りには家がポツポツある程度で見晴らしが良い場所に立っている蒸留所だ。
蒸留所内は外観や立地から想像するよりも近代的で合理的だ。マッシュタンはこの地方では最大、ウォッシュバックの数も多く、スティルもコンピュータ制御…。出来る限り効率化を進めているそうだ。将来の需要予測が難しく。効率的に生産量を増やしていると言うことらしい。品質との兼ね合いはどうなのか。例えばウォッシュバックに関してはオレゴンパインの桶とステンレスの桶ではブラインド・ティスティングをした時に、その違いを指摘できるウィスキー専門家はいないという。ならば、メンテナンスが容易に出来て微生物管理がキッチリできるステンレス桶の方が有利と言う判断らしい。この話しは色々物議をかもしそうだ。明確に昔の酒と今の酒では違いがあるのも事実。それをどのように説明すればいいのだろうか。
現在、グレンファークラスは90%近くがシングルモルトとして市場に出るそうだ。熟成に使う樽は大半がシェリーカスク。今後はその比率をさらに高めていくらしい。これからはマッカランの有力な対抗馬になっていくのだろう。ティスティングでは30年と1994をティスティングさせていただいた。1994はシェリー香の強い当世風のもの。比較的若い世代には受けがいいのかもしれない。1994の最後の一本を購入して帰路へ。明日は朝の飛行機でオークニーへ。近くに泊ってももいいのだが、朝の楽さ加減を考えてアバディーンに宿を取ることに。空港の近くではなくシティに宿を取ろうとするのも渋滞に巻き込まれたりで到着した時間が遅くなってしまい何処も満室。駐車場付の宿、特にツインは探すのが困難。いいかげん探すことに疲れビールの誘惑に勝てず、A96沿いの駐車場付のパブへ。今晩は車で一泊。これもまた一興。

つづく…
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