2002 Trip to SCOTLAND
スコットランド 旅の日記
〜Whisky suicide vol.1〜
2002年3月1日号                                     
「2002 Trip to SCOTLAND 〜Whisky suicide〜 vol.1」


ISLAYに向かうフェリーから

グラスゴーのホテルの部屋


Inverrarayにて休憩中のScottish Citylink 926

Campbeltown Main street


Springbank DIST.
Campbeltown B&B
"Kintyer House"

Wm.CADENHEAD社
Head Office




Distillery Report picturs
Springbank Distillery
Glen Scotia Distillery
Glengyle Distillery

気持ちのいい午後…



最初の訪問先CAMPBELTOWNを後にし、ISLAY行きのフェリーをつかまえるため、一路グラスゴー方面、Kennaclaigへ…



無事ISLAYのPort Askaigに到着。

見慣れたBOWMOREのメイン・ストリート

お馴染みBowmore蒸留所


Loch Indaalを挟んでボウモアの対岸
          ブリックラディ周辺の海岸線



久しぶりにスコットランドへ行ってまいりました。
そこで、今月、来月の二ヶ月に渡り、現地での日記と蒸留所の
リポートなどをお送りしようと思います。第一回目は旅の前半、グラスゴー〜キャンベルタウンそしてアイラまでの旅を写真と共にご報告いたします。

10.Feb.2002
from Narita to Glasgow

見慣れた風景に、懐かしさを感じる。
ヒースロウからグラスゴー空港に到着したときの安心感。
無論、生まれ育った故郷ではないのだが何故、「帰ってきたな」と思ってしまうのだろうか。
天候は悪く、激しい雨。気温は比較的高いようで、さほど寒くない。
年のせいか、普段の仕事のしすぎなのか、TokyoからGlasgowまでの道のりは
私を疲れさせるには十分なものであった。
さて、早速メールでもと思って接続を…
呼び出しはするもののアクセスできない。イライラ・・残念!!
ダメだこりゃ。とりあえず、イライラしてもしょうがないのでメールはあきらめることに。
お客さまはじめ、スタッフの皆、ごめんなさい。しばらく私は、音信不通になります。

11.Feb.2002
Glasgow 〜 Campbeltown

まずはたっぷりの朝食。Scottish Full Breakfast.....
これ、美味しい。実に合理的でヘルシー。
毎度毎度の事ながら、旅人にとっては本当に有難いことです。たっぷりの朝食でご機嫌になって、大きなカバンを抱えてホテルを後にする。
今日は早速、CAMPBELTOWNに向かう予定。
それにしても、3年ぶりのSCOTLAND…
たったの3年間で、私もずいぶんと年をとったようだ。
心なしか、以前とは目にする風景や、口にする食べ物が違って感じるのは何故だろう。
この場所に来るのもいつものこと。ブキャナン・バス・ステーション。
乗りなれたスコティッス・シティリンク926で一路キャンベルタウンへ。ブキャナンからおよそ4時間半の長旅。二回目になるこの路線のバス。それにしても目に入る風景が綺麗だ。ロッホ・ローモンドからロッホ・ファインそしてキンタイア半島の海岸線と丘陵、羊…「あーSCOTLANDにいるんだな〜」と思わせてくれる風景が一杯に広がって、とても幸せ。

12.Feb.2002
Campbeltown

この小さな町を訪れるのは、3年ぶりにして二回目。
いつも二月の閑散とした時期にしか訪れない、風変わりなゲストである。
こんな町に季節外れに現れた東洋人。町行く人々もどこか興味深げである。
どうもほとんどの人が、旧正月のホリデーで旅をしている中国人だと思っているらしい。
ところで、今回の宿、SPRINGBANK蒸留所の隣のB&Bに宿を決めて正解。
立地もいいし、とてもやさしい女主人と犬がお出迎え。とても典型的な宿でほっとする。居心地がいい。
いつも感心させられるのだが、実に手入れの行き届いたすばらしい室内。
何がこの国を豊かさせるのか…少しだけわかったような気もする。
ところで話しはかわるが英国は今、イングランドの一部は大雨で洪水が発生しているらしい。
どうやら、アクセスポイントから応答が無いのもそのせいかもしれない。
今日は、EAGLESOMEで今回の初の買い付けを済ませてSPRINGBANK、GLEN SCOTIAへ向かう予定。そして明日は、はじめてフェリーでISLAYへ…やっぱり行く事になってしまうんだな、ISLAYには。

 Distillery Report

CAMPBELTOWN

 今日、2月12日はキャンベルタウンに滞在し、暇に明かして蒸留所めぐり。
とは言っても、この町には現在2箇所半?しか蒸留所は無く、すべて訪問しても半日もあれば十分。
という訳でゆっくりとフルブレックファーストをいただいてのんびりと散歩しながら蒸留所めぐり。
最初の訪問先は滞在先にB&Bの横の路地を入ったところにあるスプリングバンク。
残念ながら、現在蒸留所には、中を案内できる人がいないので…ということで見学は丁重にお断り。
残念!!
どうも最近マネージャーが変わった影響なのか、少しその雰囲気も変わった様子。
お話を少し伺ったところ、現在、ヘ―ゼルバーン、グレンガイルの新しいモルトに関するお仕事で忙しいとのこと。スプリングバンク蒸留所ではロングロウ、へーゼルバーン、スプリングバンクの3種類を製造しているそうで、このうち、最も新しいへーゼルバーンはあと二年くらいでファーストロットのボトリングが出来そうだと言っていた。このへーゼルバーン、以前日本のウィスキーの父、竹鶴正孝が修行した蒸留所として知られており日本のウィスキー業界で生きている人間にとってはとても気になる名前。その辺を伺ったところ、今回のへーゼルバーンは名前こそ同じなものの以前のへーゼルバーンを再現する試みではない様子。一方グレンガイルは、蒸留所を建設中。(スプリングバンクからすぐ近く。)
全体的な印象としては、資本の投下が着々と進んでおり、世界のウィスキーマーケット拡大を見込んでの投資が確実になされて言える印象を受けた。歴史を感じさせる赤レンガつくりの外観とは打って変わって、お話を伺ったオフィスは近代的で、パソコンを前に仕事をしている人たちの姿がまるで、都会にある弁護士事務所(?)のよう。もはやウィスキーは偏狭の地SCOTLANDの地酒だけでは語れないほどの経済効果をもたらす産業のようです。(何はともあれウィスキーがうまいのに変わりは無い。)
 気を取り直して、一路、前回の訪問のときは閉鎖中だったグレンスコシアへ…
ふらふらと門をくぐり、ウロウロしていたところ、いかにもスコッティシュらしい人懐こい笑顔のお兄さんがお出迎え。
蒸留所を見学したい旨を伝えると、マネージャーのいるオフィスを教えてくれそこで聞いてみるようにと。
マネージャーは女性の方でわかる人に案内させるといってウォッシュ・ルームで待っているようにと
待つこと数分、かなり訛りのきつい年配のいかにも熟練工といった風情のおじさんが登場。
見学はすべての工程を案内するが、写真撮影は禁止された。
スティルは他の蒸留所に比べ幾分小さめ、加熱方式はスチーム方式。訪問した日は、ちょっとボイラーの機嫌が悪くてこずっている様だった。(タイミングの悪いときに訪問してごめんなさい。)フロアモルティングは行っておらず、すべて製麦した状態の原料を購入しているとのこと。製麦した麦はスモ―キーでもあるが、グリストの状態では大変甘味のあるものだった。また、ニューポットの雫を舐めさせてもらったが大変甘く、ニューポット状態でも飲めそうなものであった。しかし彼らに言わせると、最低でも二年間は熟成させないと飲める状態ではないとのこと。案内をしてもらいながら、スプリングバンク蒸留所の話にも何回か触れたが、彼らの蒸留所は2回蒸留だし、あまり意識していない様子だった。全体的には、いかにもWorking Distilleryと言った様子で、「蒸留所は、見せる事、売る事よりも作ることが大事。」といった様子で、ある種本当に活気のある蒸留所であった。
最後に、見学させていただいたお礼とビジターの記帳を済ませにオフィスに立ち寄って、質問タイム。

Q:「蒸留所は何人で運営されていますか?」
A:
「3人です。最も多いときでは14人という時がありましたが現在は、マッシュ、ウォッシュ、スティルの専門家の3人です。」

Q:「小規模な蒸留所と考えてよろしいでしょうか?」
A:
「そうですね。}

Q:「蒸留所の所有者は誰ですか?」
A:
「ロック・ローモンドです。」

Q:「大きな会社ですか?」
A:
「大変大きな蒸留所です。」

Q:「ロック・ローモンドではブレンデッド・ウィスキーにグレンスコシアを使っていますか?」
A:
「間違い無く使ってると思います。しかし、どのブレンドにどの程度使っているのかはわかりません。」

Q:「ブレンデッドに関しては蒸留所としては判らないと言う事ですか?」
A:
「そうです。蒸留所としてはシングルモルト"グレンスコシア"という事しかわかりません。」

「今日は本当にいい経験になりました。ありがとうございました。」

いい天気の中、上機嫌で散歩を楽しみながら、一路、グレンガイルの建設現場へ。
外観はとても古い赤レンガつくりのスプリングバンクに似た建物。それにしても、何故キャンベルタウンの蒸留所はこう、街中の裏道りみたいな変なところに蒸留所を作るのだろうか?ちょっと離れれば十分に土地なんてありそうなのだが…
私のように二本の足で旅をする者にとってはなんともありがたく楽しくもあるのですが、不思議です。
おそらく古くはウェアハウスか何かだったのであろう建物は新しい蒸留所にしてはなかなか雰囲気が出ていて良いのではないだろうか。あわただしく工事用の車両が出入りし、忙しそうな人々が大きな音を立てていた。写真だけをとって退散。
スプリングバンクにしても、グレンガイルにしてもどちらもその表に飾られたサインは大変綺麗で目を引くもの。
そこら辺にも、ウィスキービジネスにかける情熱が伝わってくる。これから数年後には、もしかしたらビジターセンターが出来ているかも…しれない。

以上、キャンベルタウン、2箇所半の蒸留所リポート。

12 Feb. 2002

                   
13.Feb. 2002
Campbeltown 〜 Islay

今日の日記前半はフェリーの中で。
予定は未定とはよく言ったもので、日本を離れる前に今回の旅行の日程を聞かれるたびに、「今回はISLAYには行かないんです。」なんて言っていましたっけ…
キャンベルタウンに向かうバスの中KennaclaigからフェリーでISLAYに渡れることを思い出し、急遽、予定を変更。キャンベルタウンでは良いウィスキーも見つかったし、とりあえずエディンバラでは大きな仕事も無さそうなのでISLAYで普段の疲れを癒すことにした次第。いつもの事ながら予定に忠実に旅行の出来ないたちで気まぐれな癖は直らないようだ。これでは団体旅行は無理でしょう。ISLAYのマーガレット(いつもお世話になっているB&Bの女主。)にも電話をしたし、久々の島、楽しい時間が過ごせそう。
そして無事、いつもの宿にチェックイン。3年ぶりの訪問。早速、荷物を置いてボウモア蒸留所へ。
今回、初めて日本からの大きなグループとアイラで遭遇。彼らは大阪でハーバーインと言うバーのマスターとお客さんのグループと言うこと。
と言うわけで、いつもボウモア蒸留所で迎えてくれるクリスティンも大忙し。今回はボウモアの見学は遠慮してご挨拶のみ。「今回は何日いて、どうするの?」なんて質問を受けて、明日はBruichraddichに行きたいので、電話番号を教えてほしいと告げると、いつものようにさっと電話してアポイントを取ってくれた次第。ゆっくりと案内できなくて申し訳ないといって、Bowmore17年のミニボトルを戴きました。こちらこそ、いつもアポイントなしで突然訪れる変なお客でごめんなさい。
次第に日も暮れて夕方に…今晩は何処で飲もうかな。とりあえず、ハーバーインで軽く80をきめて、ディナーはロッホ・サイドで、気が向いたらウィスキーかな!!そんなわけでハーバーインへ。
"A pint of 80 please."
小さいパブなのでカウンターで静かに立ち飲み。
「ん?日本人らしき人たち…」などと思っていたら。何回かスコットランドを旅しているけれど日本人と話をする機会があったのははじめて!!
よくよくお話させていただいたところ、例の大阪のハーバーインのマスターと客さんのグループ。早速名刺を交換とあいなって、少しビジネスモード。それにしても、最果ての地で偶然にあったバーのマスター二人。SCOTLANDに魅せられてしまった変な日本人。大阪のハーバーインのマスターと、埼玉カスクアンドスティルのマスター。日出国の東西好事家の出会い。スコティッシュもびっくり!!日本のバーのお話。

14.Feb. St.Valentine day
Islay

今日はヴァレンタインなんですね〜
町のギフトショップは、グリーティングカードやプレゼントを選ぶ人たちでにぎわっていたりなんかして。
気ままに一人旅をしている私にとって、今日はなんだか少しだけホームシックになってしまう日のような…
ところでこのヴァレンタイン、日本では女の子が男の子にプレゼントをして、ホワイトディなる日に男の子がお返しをするということになっているが、当地では互いにプレゼントを交換し合うのが習慣のようで、ボーイフレンド向け、ガールフレンド向けのカードがそれぞれ売っているのが一般的。郷に入りては郷に従え。この教えの通り、私もカードを一枚…これって、ちょっといい習慣かもしれない。
さて、ヴァレンタインの話はこれくらいにして…
本日は、BRUICHRADDICHへ。
(ちょっとその前に、Round Churchで静かに普段の罪を密かに懺悔し、心を落ち着かせて、再びここに来れた事を感謝。じつは、ボウモアを訪問したかった最大の理由は、この教会で心を静めたかった…)
この蒸留所への訪問ははじめて。もっともここ五年程蒸留所は稼動していなっかったので当然。
蒸留所へは、Islayおなじみのポストバスで。朝、朝食のときに一緒だった人と話していたのだけれど、意外と島内はバスでの移動が便利に出来ると、よく言われているほど、車が無ければ移動できないところでは無い様に思います。時間も意外なほどに正確で(英国全体として公共の交通機関の運行時間は比較正確だと思う。)、使いやすいし、料金も安い。難点は、本数が比較的少ないこと。しかしこれは見方を変えれば、アイラにいるのだからアイラ時間で過ごさなくては…効率よくなんて考えないからこういう旅は豊かなんです。今日も、天気が良く、少し肌寒いが過ごしやすい陽気。英国の二月は皆さんが言うほど寒くはないし、いつも天気が悪いわけでもないんだけどな。もし、英国を旅行した人がそんなこと言ってたら、それはよっぽど普段の行いが悪いか、英国に嫌われているとしか思えない。なんて言い過ぎ!?
ふらふらと町を歩いていたら突然、いかにもILEACH(アイラっ子とでも訳しましょうか)と言った風情の老人に話し掛けられ立ち話。??何か話が食い違う。と思ったら例の日本人グループの一人と間違えていたらしい。違う人物だと言うことがわかり謝る彼。気にしないでください。と言っても彼の気持ちは納まらないらしく、車で宿まで送ると。(ちなみに、宿までは歩いても2分位なのだが…)
よくよく話を聞いたところ、彼はボウモアのピートを掘っていた人で、今は各国から訪れる訪問客のためにデモンストレーションを行うとのこと。どうやら、昨日そのデモのときにあった日本人と間違えていたらしい。おかげで、ピートに関して貴重なお話が聞けてしまった。

at Pub
12 Feb. 1:50pm Campbeltown「コマーシャル・イン」にて。

暖炉のほのかな暖かさに包まれて、午後の柔らかな日差しが、ひときは穏やかに感じられる。
「ここは日本ではないんだな。」
聞こえる話し声が外国語だから…
人々がみんな、自分とは風貌が違うから…
いや。
時間。そう、時間。
それぞれの国には特有の時間の流れ方がある。
時差ボケは、単に寝る時間が違うからじゃないんだ。
その国の時間の流れの違いに戸惑うんだ。
ここはスコットランド。
確実に日本とは違う時間が流れてる。
やっと、少しだけ時差ぼけも直ってきたようだ。
つづく…
次回は、Bruichraddichの蒸留所リポートから始めます。
 今回はこれにて。それではまたの機会に…




今月の推薦図書



 イギリス式人生

黒岩 徹 *著
岩波新書
わりと硬めの本です。岩波ですから…でも、難しい本ではありません。
同じ島国なのに、こんなに違う。同じ島国だから、こんなに似てる。
どちらにしても英国と日本比較してみると面白いことが多いようです。知っているようで知らない英国の一面が見えるわかりやすい本です。お酒や食べ物に関する英国の流儀はこんな英国人気質に支えられているのかもしれません。
現代を生きる日本人には参考になることがあるかも!?