Behind the BAR | ||
ワイン 「WINEとの出会い」 |
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2001年9月15日号 |
今回は、このページでは初めてワインを取り上げてみます。 「ワイン」ってなんだかとっつきの悪いお酒だと思いません?どこかブルジョアっぽい香りがしたり、知らないことで恥をかいたり… でも、そんな難しそうに見えるワインは、じつはこの上なく魅惑的なのです。ちょっとしたきっかけをつかめばこんなに楽しいお酒はありません。 ウィスキーを始めとする蒸留酒の世界とは一線を画すワインの世界。ワイン初心者ではありますが、その魅力は何処から来るのか、私なりに考えてみました。 |
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「WINEとの出会い」 | ||
ワインを通じて出会ったすべての人々へ… 彼達(彼女達)がいなかったら、この原稿を書くことはなかったろう。 ワインにはポリフェノールの効用なんかよりも、もっと素晴らしい効能がある。 「ワインは人と人との出会い、料理との出会いを豊かにする。」 これを少しばかりひねって解釈すれば、 「一度あけてしまったワインは飲み干してしまうのがベストである。」 酒に強い人で無い限り、一人でフルボトルを飲み干すのは簡単なことではない。ワインは誰かと飲みたい酒である。そこには、ウィスキー、ブランデーなどの蒸留酒の世界とは明らかに一線を画す、食卓との繋がりの中で存在する姿がある。それは社会と家庭という区別を設けるならば、より家庭的な酒がワインであるとは言えまいか。 10年近く蒸留酒や、カクテルに関する探求をしながらも、当初からワインという酒が何か違和感のある、不思議な魅力と魔力を備えている代物であるという認識が自分の中に存在しつづけていた。これは、何もその味わいについてのことではない。そうではなくて、その周辺がいやに近寄りがたいヴェールに包まれていた。少なくとも、その味わいには好感をもてたし、食事と楽しむワインはこの上なく気分を良くしてくれる物であると十分に理解していたつもりである。 しかし、本気でワインを好きになると状況は一変した。それまでは、自分の好みを十分に理解してくれている酒屋さんなり、行きつけのレストランなどでその時の目的に合わせて、値段と、おおよその味わい、食事の内容、などを伝えれば十分に楽しめていた。それが何処のなんであるかは深くは追求しなかった。次第に、私の中でワインに対する探究心が芽生え、何処でどんな葡萄を作っていて、醸造法が何で、気候が・・・などなど、が気になって仕方なくなってきた。結局、すべてを独学で知ることを断念しワイン・スクールに通うことになる。スクールでは、本当にいろんな事を学んだ。葡萄の栽培、醸造、格付け、ワインにおける文化的・歴史的背景…などなど、数え上げればきりが無いほどの知識と情報を得た。そこで得た知識と情報は、蒸留酒の探求にも大きな助けとなった。そして、無論、これらの学習を進めていくに従って少しづつワインに対して感じていた違和感も薄れていった… 去年の年末、「今年は、畑の面積にしてどのくらいのワインを飲んだのか」、などという程のワイン愛好家になっていた。ワインは私にとって日常の物となっていったし、特別なときに特別なワインを選ぶ意味と、それに十分な知識も備わっていた。また、休日にゆっくりと食事がとれる時には、食事に合わせてワインを選ぶのが習慣にもなっていたし、友人や親戚とホーム・パーティをするときにも、ワインを何本か持っていくことも習慣になった。 そんな中で、ふと気がついたことがある。以前は、一人で酒を飲む機会が多かったように思うし、自宅にいる時間は極めて少なかった。バーで酒を飲むことが多く、酒を飲むときは食べ物もほとんど口にしなかったし、友人達と大騒ぎすることも多々あったが、どちらかと言えば、静かに孤独に酒に向き合うことが多かった。(特別人付き合いが悪いわけではなかった。ちょっと、気取っていただけ?)この行動パターンの変化は知らない間に進行していた。そして、この変化の原因はワインにあることは明らかであった。ワインのもつ雰囲気は、他の酒類と一線を画す食卓との繋がりを無言のうちに私に認識させ定着させた。誰かと飲む酒=ワイン。この図式は私にとっては新鮮な驚きであり、新たな人生の喜びでもあった。この変化に気付かされた時、ワインを取り巻くヴェールがまた一つ取り除かれた。さらに、ワインが日常になってからの方が、孤独な酒の素晴らしさに、より一層感謝した。 私にとって、ワインも、ウィスキーも、ビールも、まず第一に商品である。この側面からこれらをとらえた時に、ワインは私にとって新しい商品であり、将来的にどのようにサーヴィスして行くのか、を現在は模索している。確かに、私はワイン愛好家になったかも知れないが、ワインのサーヴィスに関してはまだまだ経験が浅い。しかも私の店はレストランではない。むしろ、食事をする場とは対極にあるといってもいいバーである。(バーは基本的に、孤独を味わう空間だ。)この環境で何故ワインという商品を扱ってきたのか、現段階では、私にはその理由と根拠が明確にはわからない。しかし、一つだけ言える事は、「私はワインが好き」だからである。(今だから言える…) そして、それを一人でも多くの人に伝えたいと思うからである。 冒頭にも書いたが、ワインの持つ不思議な魅力、 「ワインは人と人との出会い、料理との出会いを豊かにする。」 この類稀な能力は、他の酒類を圧倒している。この事実を無視することは出来ない。だから、C&Sを立ち上げた時に、ワインを商品ラインナップに加えた。現在、その判断は正しかったと思っている。私にとってのワインとの関わりはまだ始まったばかり。末永く、付き合っていきたいと思う。 最後に… 「ビールは、新聞。カクテルは、雑誌。ウィスキーは、ハードボイルド小説。 そしてワインは、恋愛小説。」 毎日読むけどあまり気にとめない…新聞 すごく内容が濃いわけではないけど、なんとなく買ってしまう…いつもの週刊誌 一般的には、「なんとなく、女性にはわかり難い世界?」…ハードボイルド小説 なんだか、照れくさくて。真正面から向き合えない。…恋愛小説 だからワイン愛好家は女性が多いのでしょうか。皆さんはどうお考えですか? 悪くない喩え、だと思いません? |
![]() わ け "ワイン通が嫌われる理由" レナード・S・バーンスタイン *著 渡辺照夫 *訳 時事通信社 |
ワイン通の憂鬱。(?)ワイン通といわれるのも簡単なことではありません。日々の精進が必要です。 そんなワイン通の世界を著者のユーモア・センスあふれる文体で描いた一冊。軽めのエッセーなので気軽に読めます。 決して、ワインを考えさせてくれるような奥の深い著作ではありませんが、ワインの世界をちょっと覗いてみたいと思う方にはおすすめです。休日にカジュアルなワインを片手に、かる〜く、読んでみてはいかがでしょう? |